Thursday 14 January 2016

自閉症の女性の生き方 






たぶんご存知の方も多い、アメリカの動物学者ーテンプル・グランディン Temple Grandin

少し前に、子供の教育学者の”犬の教育学”という講演を聞いた時に、違った角度から物事を見られる人達の一人として紹介された。

彼女は、幼少期に自閉症と診断されるも、周囲の環境に恵まれたこともあり、自分の特性を生かした学習方法で、才能を伸ばしてきた。最高学歴を収めたということで、社会的にも成功したという見方もあるようだ。

私がおもしろいと感じたのは、彼女の視覚構造。
写真に収めるように、物事の細部を確実に記憶していき、それを脳の中で組み立てていくことが出来ること。

自分でやってみようと試みても、なかなかうまくいかない。
絵として取り貯めた記憶を辿るうちに、その時の思考や感情がどうしても入り込んでしまう。

そんな彼女が発見したのは、牛の目で見る世界。




牛が何に興奮して、何に安心するのかを、把握することで、ストレスの掛からない畜産システムの開発に取り組むことになる。すなわち、非虐待的な畜産施設の設計。

彼女がなぜこんなストレートに設計に取り組めたのか、しばらく考えさせられた。

人間は想像力の発展した生き物。それによって、他者との関係を築いたり、未来の動きを読み取ったり出来る能力を持っている。でも、それには間違いも多く、「深読みしすぎた。」とか、本人がちっとも悲しんでいないのに、「かわいそうだ」と決めつけたりして、問題が生じることも多い。

この前、ハンターの人が話してくれたのだが、鹿やウサギといった捕食される生き物は、常に恐怖を抱えて暮らしているわけではないと言う。

逃避行為は、反射神経によるもので、危険を感じたら走るというメカニズムが出来上がっているだけで、常日頃から「もしかしたら、狼がくるかもしれない」と、ビクビクしながら生きているわけではない。

恐怖(ストレス)が生じるのは、罠や金網に掛かって動けない状態が続いたりした時で、その為に動物愛護の考えから、これらのトラップ猟が禁止されるようになったそう。

犬に対しても、人間はどうしても感情移入してしまいがちだ。

「足が濡れて冷たくて可哀想」と、足を拭いてやっても、犬にしてみれば、足を触られる方がストレスが大きかったりすることもある。

本当に動物が感じていることを知るために、どんな視点があるかをまた一つ学んだ気がする。


こちら↓は、彼女の講演の様子。(日本語字幕付き)






その他、テンプル・グランディンさんの半生を描いた映画も鑑賞した。
ちょっとドラマチックになりすぎている気もするけど、当時の女性という立場で、しかも障害を持っての彼女の生き方は、勇気を与えてくれる。  トレーラーはこちら(英語)。


日本語でも彼女の著書がたくさん出ているので読んでみたい。→アマゾンjp









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6 comments:

  1. 動物関係の雑誌で彼女の記事を読んだ覚えがあります。
    動画をとても興味深く見ました。
    彼女の視覚思考云々ですが、サヴァン症候群の男性がヘリコプターから見下ろした街並みを後で写真のように正確に描写した動画を見た事があります。
    又動画の中でも紹介されている認知症の方が書いた絵画ですが、やはり認知症の方が急に素晴らしいピアノ奏者並みに弾いたという実例もあるそうです。
    研究者によると認知症とサヴァン症候群の脳の共通性があるとか。

    とにかく人間の脳の偉大さ、不思議さには驚きますね。
    そして その特殊な能力のある人たちによって救われる動物達がいる事に感動します。
    映画 ぜひ見たいし、著書も読みたいです。

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    1. コメントありがとうございます!

      私もその絵を見たことがあります!白黒の素描で、ペンだけでカリカリと描き進めていかれる方ですよね。目が点になったのを覚えています。
      サヴォン症候群というと、確か山下清さんもそうだったとか。確かに彼も、旅先で見た風景を自宅に戻ってから、鮮明に描き表すことができるという点でよく似た才能なのかと。
      脳の世界は本当に不思議です。ある部分が欠けると、ある部分がそれを補うように発達する。またその逆もありえたり。
      また、はたして欠けているという考え事態が偏った考えなのか。。思いは尽きません。

      ただ一つ言えることは、そういった才能を引き出せるのも、教育の仕方次第なんだと思います。相方が子供と関わる仕事をしているのですが、そんな少数派の子供たちに、現在のシステムに沿った道だけではなく、違った道もあることを教える大切さを感じます。

      映画はドイツ語吹き替えを観ました。temple grandin film deutsch で検索すると、ネットでも観られますよー。

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  2. 先の花火のトラウマの件ですが、ほんのちょっとしたいたづら…。
    罪ですね…。
    私の犬師匠も、雷や花火を怖がる犬を「治す」事はできないと言っていました。
    元々苦手だった子がもしも目の前に爆竹投げつけられたら…想像するだけでゾッとする…。カツがいるので余計にセンシティブなのかも分かりませんが。辛いですね、飼い主さんとその犬…。

    ところで、私の勤務先は毎年高校生のインターンを取るのです。学校のカリキュラムの一貫です。
    学校にいく代わりにインターンをすることで単位が認められる=普通に学校のお勉強だけでは単位が取れない、大概問題がある子だったりするのですが、今年の子は、オーナーも私も「いやいや、ちょっと無理…」と思う子でした。
    専門的な用語が分からないのですが、所謂知的障害がある子で、更に両親家族皆生活保護…。働くという意味や理由を教えてくれる大人が彼女の周囲には誰もいないのです。
    ちょっと無理これは…と思ったのですが、彼女には何かある…。
    普段暴れん坊のハスキーが彼女といると、リラックスして、テーブルの上でおとなしくなったり、これはビックリしたのですが、我が犬、シャイなカツも、初日から彼女には心を許すどころか、鼻泣きしてみたり、ぴとっと彼女にくっつく。
    なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなのーーーぉぉぉぉ???!
    (笑)
    犬は分かるんですね。。。
    凄い、動物って。

    ただ、そう感じるのは私だけかもしれないのですが、私が子供だったときとは違って、この頃はちょっとしたことで学習障害や、病名が直ぐについてしまうことも…。
    日本では周囲に子供がいなかったり、まぁ、こっちでもそんなに子供が周囲にいませんが、いとも簡単に?というか、知ってる子たち大多数?という勢いで、様々な「障害」(敢えて「」をつけさせていただきます)を持っている子たちの多い事。
    そして、仕事や勉強ができない理由はその障害だと。
    更に、保護者は薬が必要だと。。。
    なんだかモヤモヤするのも否めません。

    ちょっと話から反れてしまいました。

    動物が感じる恐怖心について、興味深いです。
    トラップ漁で動物が感じる恐怖心…。
    ますますファー反対ーー;

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    1. コメントありがとうございます!

      実は、私たちが二匹目を探していた時に、知り合いからこのトラウマを持った犬を飼ってくれないか?と申し出があったんです。私たちが田舎で生活しているということと、他の犬が側にいると少しは落ち着くということから。でも、飼い主に連絡を取ってみると、「僕は一生この犬の側に居てやりたい。」と、きっぱり言われました。その後、彼は田舎に引越しし、二頭目も考えているそうです。素晴らしい飼い主様に頭が下がりますーー。

      こちらにも高校生のインターン制度あります。確か必須だと思います。嫌々やっている子も多いし、お金持ちの子はパパの会社で、とか、意味あるのか?とも思いますが、基本的には良い制度ですよね。学校だけじゃ、社会の厳しさとか分からないし、、私もやってたら、もうちょっとマトモな大人になれたのかも(笑)。

      私の好きなトレーナーさんが、正にそんなワークショップをされていました。児童福祉施設の子供たちに、問題犬のテラピーを一緒に行うというもの。
      人間(特に大人)には、警戒を見せる子供も、動物となら対等に付き合えるとか、犬も100%の信頼を感じるのか、問題行動を軽減させたり、、。学術的には解明出来ない、子供と犬の相互作用を、感心しながら読んだのを覚えています。
      たぶん、その彼女も、私たちが見えないものを感じることが出来るのか、今までの試練(親とか)からやっと開放された世界を動物に託せることで、犬からも信頼を得られるのか、、、不思議です。

      そうですね、本当に酷いですね。小さな子供がどれほど多量の薬を飲まされているか、実際に見る機会があるのですが、必要なのかな?と思うこともあります。”学校の授業を静かに受ける”のが第一の目的の様ですが、相方の接しているある男の子は、授業中落ち着かなくなると、腹筋50回やることで、引き続き授業を受けられるようになったそうです。でも、授業中に腹筋を許してくれる先生も多くないので、以前は薬を飲んで学校に通っていたとか。

      でも、その鍋コさんのところのインターンの子もそうですが、実際に接する受け入れ側も大変なことは事実ですよね。臨機応変に対応出来るキャパシティがなければならないし。。。
      利潤や手際だけで考えると、省かれてしまう存在というのがまだまだたくさん出てくるのかと想像すると、ぞっとしてしまいます。。

      そうそう、魚釣りも、このストレスをかけてはいけない”と言う理由から、色々なことが禁止されていたりするんですよー。

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  3. 動画面白かったです。

    実は私も結構前から自閉症やダウン症と言った所謂「障害」をもった
    人々に関心があります。
    障害なんて一般的には言われてますが、私はこういう人達のどこかが欠けているというよりは、もうそれは強烈な個性がある人間だと認識していて、そんな個性の内側を詳しく知りたくなる欲にたまに駆られます。

    もちろん症状には大きな差があって、生活もままならない方々が苦労されている現実も承知してますが、テンプルが言うようにこの特殊な能力をもっともっと引き出してあげられる指導者が世界には必要だと痛感しますね。
    そうして、自閉症への理解が一層深まれば嬉しいのだけど。

    最近見たとても興味深い動画ですが、張っておきますね。
    (3部作です)
    https://www.youtube.com/watch?v=Eq_yb_y4MjM

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    1. コメントありがとうございます!

      ご紹介いただいたドキュメンタリー、日本に帰っていたときに、母が録画しておいたものを偶然見る機会がありました。私も興味深く見入ったので、今でも鮮明に覚えています。
      母がそういう障害を持った方と接する仕事に就いていたのもあり、私にとっては小さい頃から身近な存在だったのですが、子供の頃の記憶では、違った人間という感覚はまったくなかったんですね。おもしろい遊びをしてくれるお兄ちゃんやお姉ちゃんという感じで。(たぶん、もの凄く楽しかったらしく、今でもその時の砂場の光景とか思い出すことがあります。)

      そうですね、この動画にもあるように、ご家族の苦労は計りしれないものだと思います。両親とはいえ、その分野では一から勉強しなければならないのですから。だからこそ、専門家の手助けがどれほど重要なことか、また周りの支援がどれほど必要なことか、一般に理解が行き渡れば、本人もその家族も負担が軽減されると思います。

      そして何より、そんな個性で人々を感動させられる貴重な存在なのだから。

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