Monday 27 April 2015

数十年後のために サケを放流する








毎日の犬の散歩コースの森には小川が流れています。

農場の冠水のために残されている小川で、一時期は農薬や過剰な肥料の投入で、悲惨な状態だったそうですが、ここ数年、長年の自然保護政策の成果もあって、魚が住めるほど水質が改善されました。

そこでこの度、地元の釣り協会の協力のもと、ここの集落でサケの放流をする運びとなりました。


犬がバシャバシャやってしまってアレですが、一応澄んでいます。


これが、放流されるサケの稚魚たち。

かわいいですねー。メダカを飼うのが夢なので、見惚れてしまう。



一応集落全体に声を掛けたんですが、集まったのは子供も入れて20人弱。

まぁそんなもんです。金曜の夕方だったし。

でも、子供が半数以上だったのが、せめてもの救い。
数年後すぐに結果の出る活動ではないので、今の子供が大人になった時くらいに、

ああ、そういえば、子供の時に、、、と思い出して貰えるのが一番の目的ですから。

女の子たちは、魚よりも初めて見る日本人の私に注目してましたが、それでもいいんです。
いつだったか、村に日本人がやって来て、なんか魚のことがどーとかって、、と思い出してくれれば。


みんなで放流場所を求めて歩きます。



こういう根っこなんかが蔓延っている、魚の隠れ場所があるところがいいんだよ、と教えてもらいながらポイントを探す。



そして、遂に放流。

大人ながらに、私も感動しました。
なんでしょうね、放流した瞬間に、この魚達が海に渡って、色んな経験をして、また川に戻ってくる一生を思い浮かべてしまうというか、、たいやき君の気持ちというか、、、。



さっくりと20分もかからないうちに無事終了。


そして、ここからが裏話。大人の事情。

大昔は、サケがここまで登って来ていたことも事実ですし、水質の状態も安定してきたのは確かです。

だから、まったく無理な話ではないのですが、
今回放流した魚が本流の川に辿り着くまで生き延びて、成長し、海に下って行くまでさらに生き延びて、海で成魚の期間を過ごし、またこの小川に還ってくるとは、誰も信じていません。

そんなに簡単にいくものではないのです。

では、なぜこんな無駄なことをしているのか?




その理由の一つには、自然保護活動を続けるに当たって、行政に圧力を掛ける為でもあります。

単に、川が汚れるので、農業用水を直接流さないで下さい、農薬、肥料の規制を見直して下さい、
と、言うよりも、

この小川は、サケの生息地です。”と、言ったほうが、説得力があるからです。


もう一つは、この小川の本流の数十km下流に、古い古い水力発電の施設があります。
今は殆ど使われていないのに、これがあるために、魚は下ることが出来ても、上流へと昇ることが出来ません。

ほとんど使われていないというのがミソだと思うのです。
まったく使われていないのならば、すぐにでも撤去出来るのですが、少しは発電しているそうです。

でも、その発電所を設置したままにしておく為に、それを迂回するような形の、新たな川の道を作る計画も挙げられており、これに何千万円という莫大な資金が掛かるのです。

そのお金で、もうちょっとマシなエネルギー取得方法があるんじゃないの?と、念を押したい。


こう書いてしまうと、夢も希望もない話のように聞こえるかもしれません。

もちろん、数%の魚は、海まで辿り着くことも出来るだろうし、そう祈っています。

でも、一度だけで結果が出るのではなく、継続していくことが重要なことなんだと、こういう企画を通して改めて思ったのでした。


サケを見つけたポインター。 (偽)


いつか、この辺一帯のレストランで、イクラ丼が名物になっていることを祈って。








6 comments:

  1. そういうのを生き物の役割なさせるって日本でもありましたねえ。
    日本では鮭を多摩川に放流させるっておバカな事があったようで。
    鮭(酒)は銚子までってシャレあるのに。

    まあ、そういう啓蒙的圧力的使い方は悪い事ではないと思います。
    ただ、メダカやコイのように新たな環境破壊にならなければの話ですが。

    でも、鮭戻ってきても、イクラ丼は名物には絶対ならないw

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    1. ええ!そんなシャレ、知りませんでした。。
      それに、メダカの新たな環境破壊って、遺伝子汚染のことですか?
      調べてみたら、今回のサケは、地元で繁殖させた稚魚だそうです。

      こっちの殆どの川や湖では放流をやっています。それぐらい魚居ないですからね。中には多摩川並に、すごく無理のあるものも多いです。
      今回私もちょっと引っかかったんですがね。
      いやぁ、また勉強になりました!

      じゃぁ、イクラカナッペくらいにしときます^^

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  2. 素敵な話ではありませんか?
    たとえ後ろにそういう政治的な理由があったにしても
    やるかやらないか、そこに大きな違いがあります。
    北海道で子供の頃にずいぶん鮭の放流キャンペーンをしていてそれが実ったのを覚えています。
    うまくいくといいですね。ドイツのいくら丼生きている間に食べに行きたいです!

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    1. ポイントは、そこですよね、私も生きている間に、、、とか考えてしまいましたから(^^;

      私も北海道の鮭が戻ってきたというのを、耳にしたことがあります。
      今の環境を大きく変える(例えば大幅な川の構造を元に戻す工事とか)よりも、今の状態を保つ努力に力を注いだほうが、近道だったりする場合があるのかな、とも思います。そして、そういうことが出来るのは、行政じゃなくて地元住民だけだったりするんですよね。

      それなのに、参加者少なっ!!! と突っ込みたくなりましたが、まぁ、お金を出してくれただけでも十分ですかね。

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  3. いいお話ですね~。なんだか、しみじみしちゃいました。

    オトナの裏事情に利用されるサケの子供達・・って、言ってしまったら、少し悲しいですけど、でもこの川にサケが戻ってくるためには、どうしたらいいんだろう・・ってことを考え直すいい機会を与えてくれたと思います。本当に近い将来、無事に生まれた川に戻って来て、是非「イクラ丼」に・・・いえ!次世代に伝えて言って欲しいですねー・・。

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    1. コメントありがとうございます!
      返信が遅れてスミマセン!!

      大人の裏事情なんて書いちゃったのは、参加してくれた子供たち(男の子だけですが)の反応がなんとも素直に感動してくれたので、ギャップを感じたというか、、(^^;)
      遠い遠い昔は、サケもマスも登ってきた川で、環境さえ整えば、体内に記憶された感覚を使って帰って来てくれるというのも、普通のことのように聞こえますが、凄いことだなーと改めて思いました。
      そちらは旅から戻られたんですねー楽しく拝読させていただきます!!

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