Monday, 29 July 2013
Unterm Rad 車輪の下 ー釣り少年の記録
この小説でこの部分を取り上げるか?という方もおられると思いますが、
個人的に何度読んでも好きなくだりです。
主人公の少年ハンスが入学試験に合格し、神学校に入るまでの期間、試験勉強の為に長い間
禁じられていた子供の為の夏休みをやっと満喫出来る僅かな時間の描写です。
魚釣りが好きなハンスが大事にとっておいた古い釣り道具を修繕するところから、
既に少年の期待は高まります。
朝ご飯もさっさと済ませ、一目散に川へ駆け出し、途中でバッタを集めながらお気に入りの釣り場に
到着。柳の木にもたれながら、ウグイや鯉といった魚との真剣なやり取りが始まります。
作者ヘルマン ヘッセが幼少年期を過ごした、18世紀後半のシュヴァーベン(南ドイツ)の黒い森地方
にある小さな町がモチーフになっており、彼の他の作品にも度々この故郷の風景が書かれている。
こちらは北ドイツなので、生息する魚も植物もやや異なりますが、川辺に腰を下ろしてじっと水面を
眺めたり、不意に空を見上げてみたりすると、そんな幼少期の感覚が蘇ってくる気がするんですね。
これはやはり、待ちに待った楽しいことだらけの”夏休み”があったから。
夏がそんな感覚を呼び起こしてくれる。
”日は高く上がり、土手のせきの水のあわは真っ白に光り、川の上にはあたたかい微風がふるえ”*
始めたら、帰りの支度だ。
昼ご飯分の魚も獲れたし。
*車輪の下 高橋健二訳 新潮文庫
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車輪の下でここかよ…
ReplyDeleteすいません、私も思いました。
でも気持ちはよくわかります。
AKAさんのブログで真っ先に思い出した書物は開高健でした。
初期のエッセイ集「フィッシュ オン」にパイクを釣る話があるんですね。
よっぽど楽しかったのか、その光景が「夏の闇」にも使われています。
男女、快活で働き者留学生の女性と、作者らしき怠惰な男性が再開し、別れるまでを書いた恋愛小説。
その主人公が生き生きと動くのが、パイクを釣るシーンでした。
私はその続編、「輝ける闇」の方が好きですが、
パイクを釣る描写は印象的でした。
あそこまで釣りを書ける日本の作家ってもういないのかな?
まだ読んだことがないんですよねー。
Delete是非次回の日本行きで手に入れたい本の一つです。(長鼻くんも)
随分前に開高健の専属料理人のインタビューを見たことがありますが
(確かカセットテープにやり取りを録音していた)
釣って、料理するところまでを完璧に実行させていく粘り強さと強引さは
圧巻でしたね。
ここまで引っ張っていける人が少なくなった、
それに付いて行く人も少なくなった、ということなんでしょうか。